こんにちは。Dr. NAOKI(@urarikei_career)です。
これまで中古物件のみを所有していましたが、2022年から新築木造アパートを手掛けています。
そこで、「これから新築アパートに取り組みたい!」という方に向けて少しでも参考になればと思い、実体験ベースでの新築アパートの進め方について書いていきます。
ただし、「地方(富山県)での新築木造アパート」である点にご留意ください。
この記事では、【新築アパート投資法・第1回】として、新築アパート投資に必要な資金計画について説明します。
新築アパート投資の全体の流れ(概略)
- 自己資金を準備の上、資金計画を立てる。← 今回の記事
- アパートを建てるための土地を見つける。
- アパートを建ててもらう建設会社を見つける。
- 建設会社にアパート候補地での設計図と見積書を作成してもらう。
- 事業計画書を作成する。
- 金融機関に融資を打診する。
- 融資の内諾が得られたら、土地の買付証明書を仲介業者に提出する。
- 買付証明書の承認が得られたら、売主と土地の売買契約を締結し、決済を行う。
- 金融機関と金銭消費貸借契約を締結する。
- 建設会社と工事請負契約を締結する。
- 建設会社から行政に建築確認申請書を提出してもらう。
- 融資実行後、建設会社に着工金を支払う。
- 近隣住民への挨拶回りに行く。
- 建設工事の進捗状況に合わせて、中間金・完工金を支払う。
- 建設会社からアパートを引渡してもらう。
- 不動産会社に入居者を募集してもらう。
- 不動産取得税や固定資産税等の税金を納める。
自己資金の必要性
新築アパートの場合、総事業費(初期投資額)は次の3つに大別されます。
- 土地購入費
- アパート建設費
- 諸経費
不動産投資の初期ステージにおいては、融資による資金調達を考慮した上で、「今ある手元の自己資金から、どのように資金計画を立てるか」という戦略が重要です。
イメージとしては、こんな感じでしょうか。
2022年現在、自己資金の金額としては、総事業費の2割が目安となります。
ただし、自己資金と融資の比率は、社会経済状況や金融政策などによっても影響されますし、「金融機関ごと」や「案件ごと」はもちろん、「投資家ごと」に異なります。
したがって、希望する融資条件を考えた上で、自己資金を準備することが大切です。
自己資金の割合は、「融資額」に対してか「総事業費」に対してか、金融機関にもちゃんと確認しておきましょう。
例えば、総事業費6,000万円の案件の場合、「総事業費」に対して2割であれば自己資金1,200万円/融資額4,800万円となり、「融資額」に対して2割であれば自己資金1,000万円/融資額5,000万円となります。
よほどの条件が揃わない限り、総事業費の全額を融資(フルローン)されることはありません。
たまにTwitterとかで、「新築のフルローン出た!」とつぶやいている方もいますが、彼らは何かが飛びぬけています。
自分もそうなると期待しちゃいけませんw
が、「なぜ彼らがフルローン出るのか」ということについては、とても参考になります。
「銀行がお金を貸したいのはどのような人か」をよく考えましょう。
これから自己資金を貯める必要がある方は、以下の記事も参考にしてみてください。
資金計画を立てるためには、「総事業費」について、もっと詳しく知っておく必要があります。
総事業費で最も大きなウェイトを占める(※)のが、アパート建設費になります。
(※)当サイトでは、土地を安く仕入れて利回りを出すことに主眼を置いているためです。
アパート建設費の相場を調査する
ここで言う「アパート建設費」とは、建物の建築費だけではなく、各種調査や申請費用・土地の造成費用・外構工事費用・設備費用を含めた1棟のアパートとして商品化するための費用のことを意味します。
ちなみに細かい話ですが、「建築」と「建設」とでは、意味が異なります。
「建築」と「建設」の違い
- 建築(Architecture):
家などの建築物を造る行為 - 建設(Construction):
建築物を造る行為に加え、建築物以外のインフラ整備(外構、電気、設備など)のための土木工事も含む
希望する間取りで、1室あたりの建設費がどの程度になるか調査しておきましょう。
アパート建設費の相場を調査する3つの方法
- 投資家に聞く:
直近でアパートを建てた方に聞くのが一番手っ取り早いです。 - 不動産業者に聞く:
不動産業者は多くの投資家と繋がりがあったり、また、自らが賃貸経営をされていたりもします。
「情報戦」においては圧倒的に有利な立場ですので、普段から良好な関係を築いておきましょう。 - 建設会社に問い合わせる:
アパート建設に実績のある建設会社に問い合わせることで、新鮮な情報を聞くことができます。
なお、「工務店」は建築が専門で、外構工事などを請負業者に外注することがあります。
アパート建設は計画段階から完工までに半年~1年間はかかるため、今後の建設費の市場予想についても調査・ヒアリングしておいた方が良いでしょう。
部材や設備の価格高騰が予想される場合、追加費用が発生した際に備えて、多めの自己資金を用意しておくなどの対策を講じることができます。
自己資金を使うタイミング(融資を意識した資金計画)
資金計画を立てる上で、「自己資金をどのタイミングで使うのか」というのは、融資の審査だけでなく、利回りにも影響を与える要素になります。
自己資金を使うタイミングとしては、いくつかのパターンがあります。
土地を購入する時(最初に使うパターン)
最初に、アパート建設用地(+土地購入に係る諸経費)を自己資金で買います。
「土地の現金買い」って言うやつですね。
その後発生する建設費用と諸経費の支払いを融資から充てますが、融資で足りない場合は自己資金から補填しなければなりません。
このパターンのメリットとデメリットについて解説します。
メリット
- 土地の所有権が既にあるため、金融機関の審査をスムーズに進められる可能性が高い。
- アパート建設費+諸経費でフルローンが出る可能性がある。
- 建設費の支払方法のほとんどは、着工金・中間金・完工金の3回に分けられるため、その都度融資実行してもらう「つなぎ融資」によって、金利の支払総額を抑えることができる。
デメリット
- 土地を現金買いすることで、初期の段階で手元資金が大きく減ってしまう。
- アパートを建てないと、土地を寝かせたままにさせてしまう。
土地活用しないまま時間だけが過ぎていくと、ただ固定資産税の支払いが発生するだけの所有物になり、それに地価の下落も加わると負け戦になってしまいます。
このデメリットを回避する方法の一つとしては、「アパートのプランが固まってきてから土地を購入する」ことですが、プランニングに時間がかかると、他の投資家や業者に土地が流れてしまいます。
したがって・・・
不動産投資はスピード勝負!
限られた土地情報から商品化へのイメージができるような土地の目利きと素早い判断が必要ですね。
アパート建設費や諸経費を支払う時(最後まで残しておくパターン)
自己資金では土地が買えない場合、このパターンが想定されます。
土地購入費を融資から支払うため、土地決済のタイミングで融資を実行してもらいます。
私の新築AP・1号棟はこのパターン!
このパターンのメリットとデメリットについて解説します。
メリット
- 自己資金を手元に残しておくことで、様々な不測の事態に柔軟に対応することができる。
- 工事の減額によって、最終的に自己資金が残る可能性がある。
デメリット
- 土地の買付証明書に融資特約を付ける必要があるため、土地を購入できる確度が低くなる。
- 融資実行のタイミングが早くなるため、元金返済の据置期間が短くなることや金利の支払総額が高くなることに注意が必要。
(据置期間については、相談に応じてもらえる場合があります)
このパターンでは、融資が土地決済時に全額一括で実行されるため、着工前の段階にもかかわらず金利の支払いが重くのしかかります。
また、金融機関から「最初に自己資金を入れて欲しい」と言われる可能性もあるため、ちゃんと見せ金を用意しておくことも大切です。
なぜ金融機関がそんなことを求めるのでしょうか?
それは、「自己資金がちゃんとあるかどうかの証拠の確認」と「事業計画に沿った使途になっているかどうかの資金管理」を目的としています。
以上の2パターンは、あくまでも例です。
どのような運用方法にすべきかは、金融機関によってもスタンスが異なるため、融資面談の際に資金計画についてよく確認・相談しておきましょう。
自己資金をどのように残すか、支払総額を抑えられるのはどのパターンか、よくシミュレーションすることが大切です。
総事業費から土地の予算を決める
「アパート建設費(建設単価)の相場」や「自己資金の運用方法」が理解できたら、総事業費(概算)を算出して、「土地購入費」の予算を決めます。
例として、自己資金が1,000万円あって、アパート建設費が1室あたり600万円(税込)のケースを見てみましょう。
- 総事業費の算出
・自己資金は1,000万円
・融資を受けるには2割の自己資金が必要なため、融資可能な金額は5,000万円
・総事業費は6,000万円 - アパート建設費の算出
・8室欲しい場合、8室×600万円 = 4,800万円 - 諸経費の算出
・諸経費は300万円
(諸経費については、別の記事で詳しく解説します) - 土地購入費の算出
・土地購入の予算は、6,000万円 - 4,800万円 - 300万円 = 900万円
このフローを見て頂けると分かると思いますが、「自己資金が2割必要」という金融機関のスタンスが一律であれば、総事業費は自己資金の額に依存します。
つまり、「今ある自己資金で、どの程度の規模のアパートを建てることができるのか」が決まるということです。
そして、「そのアパートを建てるためには、土地購入の予算はどのくらいか」ということが見えてきますよね。
こんな感じで、まずはざっくりと土地購入費の予算を決めます。
それでは次回、【新築アパート投資法・第2回】「アパートを建てるための土地を見つける」をお楽しみに。